大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㉞ ヒモ靴を見直してみませんか。

私は、ヒールの高い靴を、ほぼ履いたことがありません。履いてみたくて購入したヒール靴は、4、5センチヒールのパンプス、7センチはあったと思うサンダル。記憶に残るのは、このたった2足。でも履いたのは、延べ日数で7日もなかったと思います。歩き始めて1時間もしないうちに足が痛くなり、とてもしばしば履く気にはなれませんでした。 それ以前に私は、踵が高いバランスが好きではないようです。低い靴を履いて全身を鏡に映すと、こっちの方がカッコいい、素敵!と思ってしまいます。
かくして数十年間、ローヒールのヒモ靴一辺倒の生活。
だから靴ヒモの長さ、材質にこだわりますし、何よりちゃんと締めて結ぶことは、重要です。いい加減だと、歩き心地が違うので、気持ち悪くて、悪くて、立ち止まれるスペースを探し、結び直します。

●ボタン掛けは教えるのに…
でも子ども靴の世界では、ご存じの通り、ヒモ靴は完全にマイノリティです。
私自身、子どもたちが暮らす環境や扱いのし易さからするとマジックテープがベターと言いもし、書いてもきました。
でも、でも、でも、内心は…。
ヒモの方が足に合わせて調整することができる。それに服はと言うと、保育園の先生は、お昼寝の時にボタン掛けを教えてくれる。ボタンで留める前開きはダメなんて言わない。さらに知育番組には「パジャマでおじゃま」もある。ご存じ、ご記憶の方もいらっしゃると思うが、歌に合わせて一人でパジャマを着るのだが、これに使うパジャマはボタン掛けの前開き。パジャマを着る=ボタンを掛けるであり、ボタン掛けを教える歌ともいえる。ボタンは一人で扱えるようになることが必須として認識されているのに、靴ヒモはどうして最初から退けられるのか?!
靴ヒモの通し方、結び方を練習する本ならあります。洋書、またオーストリアの会社が出版したものの日本語版もあります。知ってはいても現物を手にしてはいなかったので、この機会に取り寄せてみました。
本屋さんでは無理。アマゾンのお世話になりました。ジャンルを「洋書」にして「children shoelace」と検索ワードを入れると、79もヒット!その中に靴ヒモ付きで実際に練習できるものが5つありました。その中の一つを注文すると、お勧めの類似本の中に日本語版がありました。

●結ぶことは、日本の文化
翌日に届き、早速、開封。すると、息子が「それ、何?」。説明すると、ペラペラと見始めました。
すると、「あれ、俺の結び方と違う!」。本を見ると、私たちがよく知っているチョウチョ結びも紹介されていましたが、英語版の最初は「Bunny Ears' Bow=うさぎの耳チョウチョ結び」。1回結んだら、左右にうさぎの耳のような輪を作り、その輪同士を結ぶという方法。これは、簡単です。
さらに息子は、「すぐにヒモが解けてしまうブーツがあるんだよな」。
「イアンノットという結び方が解けにくいんだよ」と私。でも、実は知ったか。実際にイアンノットをやったことも、実践もしていません。
早速、インターネットで調べ、息子は、イアンノットに挑戦。私は、練習本に紹介されている他の方法をチェック。するとイアンノットとおぼしき結び方が「Double Bunny Ears' Bow=二重うさぎの耳チョウチョ結び」という名前で紹介されています。それを見ながら、私も、トライ! しかし、二人ともなかなかコツがつかめない。繰り返すこと、5回、6回…。最初に息子が「できた!」。「ほら、こういうことだよ」と息子に教えてもらい、私も「できた!」。この時の達成感たらありません。
風呂敷に水引、結ぶことは、日本の文化。そして、できた時の達成感。さらには指を動かすことは脳の発達にもプラスです。
ヒモを結んで履くヒモ靴を見直しませんか。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。