連載㊳ 赤ちゃんのO脚に新事実で思うこと
歩き始めたばかりの赤ちゃんの足は、踵が外に向いてしまっている状態が多く見られます。後ろから見ると、踵が「ハ」の字を描くようになっているということですが、外反足と言います。
原因は、足が未熟であること。筋肉やじん帯がまだ発達しておらず、アーチの形成が弱いために、立つと足に掛かる自分の体重を支えきれず、踵の骨が外を向いてしまうのです。
でも、筋肉、じん帯が発達し、アーチが形成されてくると、体重を受け止められるようになり、自然に真っ直ぐになっていく。外反足は、解消されます。
歩き始めのこの頃、1歳から2歳くらいのまで脚部には、O脚が見られることがあります。これも未成熟によって起こるもので、「生理的O脚」と言われ、成長に従って自然に治っていきます。
というのが、常識でした。
ところが最近、一概に生理的、つまりは体の働きに関わる機能的、あるいは本能的とも言える現象とは言えないという研究結果が発表された。
Facebookの投稿で知ったのですが、紹介します。
●O脚の赤ちゃんは、ビタミンD不足
研究は、順天堂大学医学部付属練馬病院整形外科の坂本優子准教授他によるもの。同大学によるプレスリリースによると以下の通りとなります。
O脚は、生理的なものだけでなく、くる病によるものもあります。くる病によるO脚は、血液検査でビタミンDの欠乏や骨に関する項目に異常が認められ、レントゲン画像でも骨にきちんと栄養が届いていないことが認められる。
そこで「生理的O脚」でも、くる病と同じように「骨への軽い栄養障害が起こっているのではないか」という予測のもと調査を実施。
調査は、O脚を心配して来院した赤ちゃんと、O脚がなく風邪などで来院した同じ年齢層の赤ちゃんを、男女比が同じになるように調整し、血液検査の結果を比較した。
すると次のことが明らかになった。
① O脚の赤ちゃんは、O脚がない赤ちゃんよりビタミンDが不足している
②くる病では異常に高くなる血液検査の項目が、O脚の赤ちゃんは、O脚がない赤ちゃんよりも、基準の範囲内であるものの高いこと
③副甲状腺ホルモンとビタミンDの相関関係もO脚の赤ちゃんとO脚のない赤ちゃんとでは差が認められた
③について詳しく言うと、副甲状腺ホルモンは体にカルシウムが足りなくなってくると分泌され、ビタミンDが不足しカルシウムの吸収が悪くなると分泌が増えるが、O脚の赤ちゃんはビタミンDが不足すればするほど副甲状腺ホルモンの分泌が増え、O脚のない赤ちゃんは、そのような傾向は認められなかった。
以上の結果から坂本准教授は「O脚の赤ちゃんはレントゲン画像や血液検査が基準値の範囲内であっても、くる病に近い状態にあり、積極的に日光に当たったり、サケ・サンマ・イワシ・シラスなどの魚を食べたりしてビタミンDを摂取することが大切」と結論したのです。
脚と足は繋がっています。O脚は、歩き方にも影響します。注目すべき研究結果です。
●環境によって変わる体…
坂本准教授は、今後について「お母さんのお腹にいる時、生まれた後など、どんな時期のビタミンD不足がO脚に関係するのか、栄養との関連、体質との関連などについて明らかにしていきたい」としています。
イタリアの子ども靴を広めようと熱心に取り組んでいた方が「胎児期のお母さんの栄養状態、またお腹な中での胎位も、生まれてからの足の状態に関係する」と言っていました。20年余り前のことです。私はその時、そこまで関係するのかと思いましたが、この研究結果や今後の研究課題を見ると、それも十分にあり得ると思えてきます。
私たちを取り巻く環境は、日に日に変化し、変化の積み重ねが、自分自身、そして子ども達の成長にも影響を及ぼすようになっていることは十分に予想できます。既に卑近とも言える例を挙げるなら、ハイハイをしないでつかまり立ちをする赤ちゃんは決して珍しくありません。でも50年前は、そういう赤ちゃんはいなかったのではないでしょうか。
100年前とは全く違う現代という環境を生きているからこそ、子どもの足、そして靴に気を配らなくてはなりません。
血液検査の結果:O脚の赤ちゃんは、O脚のない赤ちゃんに比べて血中ビタミンD[25(OH)D]値が低く、アルカリフォスファターゼとインタクト副甲状腺ホルモン値は高いという結果でした(グラフ、解説ともにプレスリリースより)