大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㉘ サッカー少年とシューズ

フットケア関係の仕事をしている知り合いに久しぶりに会いました。よもやま話に花が咲く中で、「仕事関係でお付き合いがある方からお子さんの足についての相談を受けたわ。サッカーをやっていて、そ れで足を傷めたらしいの」と。
ピンと来ました。かなり以前ですが、実業団のサッカー選手にインタビューしたことがあるのですが、その選手が「シューズは、つま先が余らないようピッタリのものを履いています。だから爪が死んだようになってしまうこともしょっちゅうです」と言っていたのを思い出したのです。
理由は、聞かなくても分かりました。
つま先の適正な余裕が正しい靴のフィッティングですが、足でボールをコントロールするためには、ボールとの接点となるつま先がボールに直に触れているのがベスト。その観点に立つと、シューズのつま先余裕は、足のつま先とボールとの接触を阻むものでしかない。だから、それをなるべくなくそうとする。
良いプレーをするためには、当然の判断と言えなくもありません。
しかし、足に悪影響を及ぼすこともまた、自明です。
はて、どうしたらいいのか…。
専門家の判断を仰ぐしかありません。

●通学用1㎝強、サッカーシューズは5㎜が目安
スポーツシューズに詳しい、足と靴と健康協議会認定上級シューフィッターの方に伺ってみました。
「スポーツシューズ、特に競技用のものはギアとしての意味合いが強いので、足の保護より競技者のパフォーマンスを上げることを優先し設計されています。それでサッカーシューズの捨て寸(つま先の余裕)は、通常のシューズより少ない設計になっています。だから選び方を間違えると、足全体やつま先への負担が大きくなり障害の原因になります」。
「私のサッカーシューズのフィッティングは、捨て寸を取ります。但し、通常のシューズよりも少なめです。通学用は1㎝強、サッカーシューズは5㎜程度です。次に足が靴の中でずれないよう注意します。特に甲回り、ボール部に足との隙間があるのは、絶対ダメです。子供たちは靴の中で足が滑るのを嫌がります。靴の中で足が滑らないようにするには捨て寸をゼロにするのではなく、シューズと足全体の隙間をいかになくすかです。“足にぴったり”と“捨て寸を取らない”がどこで一緒になったかは分かりませんが、全く爪先に余裕がない状態では動きにくし、軸足の踏ん張りも効かないので、シュートするにもマイナスです」。
なるほど、納得!です。

●シューズに意識を向けることから始まる
そして「競技用ギアとして設計されていることのリスクを認識していない販売者や消費者の方が多い」とも。
プロ・サッカー選手を目指し海外留学するも、怪我で断念。靴の世界に転身し、ドイツに留学。整形靴職人の国家資格を取得し、日本の靴のレベルを上げようと靴店を営む靴職人の方にもお話を伺いましたが、同じ趣旨のことを、おっしゃいました。
「日本人が靴に対する意識が低いのと同様に、サッカーのスパイクに対する監督やコーチの認識も低いと思います。親御さんの中には知り合いからもらったお古を平気で履かせている方もいます。
私は一時期、某有名メーカーの依頼でプロ選手のスパイクのメンテナンスや職人の育成をしていたのですが、そのメーカーと契約する有名選手が、ドイツでプレーするようになったら、日本の時は怪我が多かったのに少なくなった。そしてある時、その選手のスパイクがメンテナンスのために送られてきたのですが、ドイツ人マイスター(親方職人)が作ったと思われるオーダーインソールが入っていました」。
だからドイツ・サッカーは、強いのか?!
私は、完全な運動音痴であり、スポーツシューズについては、ほとんど門外漢。一口にサッカーシューズと言っても、試合に履くスパイクと練習用のトレーニングシューズがあることに、改めて気づかされたレベル。そんな私が言えた義理ではありませんが、お子さんがサッカーをやっていたら、その目的が、元気な体づくり、目指せ!サッカー選手のいずれであっても、シューズに意識を向けることをお勧めします。

サッカー少年の画像

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。