連載89 逝ってしまわれた谷川俊太郎さんに寄せて
谷川俊太郎さんが逝ってしまわれました。
そのニュースを報じた新聞記事などでは、「戦後現代詩を代表する詩人」「現代を代表する詩人」などと紹介されていますが、なぜ、このコラムで書こうとしているかと言うと、連載㊵で谷川さんの絵本を紹介しているからです。
谷川俊太郎さんは、絵本、また児童書や絵本の翻訳も多く手掛けていらっしゃいます。その代表作は、『スイミー』(レオ・レオニ)と『ピーナッツ』(チャールズ・M・シュルツ)でしょうか。『スイミー』は、小さな魚の冒険物語。小学校の教科書にも載っているそうです。『ピーナッツ』は、スヌーピーとチャーリー・ブラウンのお話と言った方が分かり易いですね。谷川さんは、スヌーピーのお話を全作翻訳されています。
ご自分の作品も、たくさん書かれています。試みに「谷川俊太郎 絵本」で検索してみたところ、535タイトルもヒットしました。
以前に紹介した作品のほかに足や靴にまつわる作品があるかもしれないと、一つひとつタイトルをチェックしてみました。
一つ、ありました。『あるくくま』です。
絵は、イラストレーターの祖敷(そしき)大輔さん。このところ、熊が人の生活域に出没し、襲われる事態も起きており、怖い存在になっていますが、『あるくくま』のくまさんは、ピンクの可愛い小熊です。
くまさんの「ぼく」は、「どこか」をめざして、あるくのがすきです。あるいていると、ちょうちょ、かきのき、いろんなものにあいます。ただ、それだけのお話です。
でも、なんだか哲学的。「あるくくま」に寄せて、人の人生、生きるということを語っているように読めます。
『あるくくま』谷川俊太郎・文 祖敷大輔・絵(クレヨンハウス)
●「さあこい、どんとこい」「かかって こい」
連載㊵で紹介したのは、『あし あし はだし』という写真絵本です。福音館書店発行の月刊予約絵本『年少版・こどものとも』1994年7月号として発行されたものです。
ご興味があれば、下記のリンクから読んでみてください。
http://www.ricosta.jp/column/kids-shoes-40.html
その最後に折り込み付録「絵本のたのしみ」に寄せた谷川俊太郎さんの言葉を紹介していますが、付録にはもっとたくさん足について記されています。
少し長くなりますが、紹介します。
「(前略)直立して二本の足でたつことが、最初に人間を獣から区別したと言いますが、初めのうちは不安定でこわかったことでしょうね。でも今はすっかり慣れて、人間は何種類もの靴をはき分けたりしています。今では都会ではだしでいる方が不安です。
立つことと歩くことを初めとして足にはさまざまな機能があります。足は実用的な器官ですが、また遊ぶ器官でもあります。跳んだり跳ねたり踊ったりするのは、生きる喜びのひとつです。私も近ごろは出来るだけ車に乗らないようにしています。(後略)」
そして『あし あし はだし』の中表紙をめくると、現れるのが、下のページです。
あし あし たった
ちきゅうに たった
さあこい、どんとこい
かかって こい
どんとこい、と立ったら、くまさんのように、いろんなものと出合うために、どんどんあるこうね。
『年少版こどものとも』1994年7月号
『あし あし はだし』谷川俊太郎・文 中村ノブオ・写真(福音館書店)