大谷知子

子供の足と靴のこと

連載90 2号くんの足の窪み

松が取れ、鏡餅がお汁粉になる時季になってしまいましたが、明けましておめでとうございます。今年も、コラムを読んでいただけると嬉しいです。
さて実は昨年、孫が2人になりました。2号くんも男の子。そうちゃんの弟です。
まだ月齢2カ月にも満ちません。まさに新生児です。首が据わらず、抱っこすると、ふわふわしていて頼りない。顔は、本当に“赤”ちゃん。生まれたばかりは、お猿さんのようでもありますが、表情は豊か。しかめっ面をしてみたり、口をすぼめたり、“笑ってる!”と言いたくなるような表情をしてみたり。まるで百面相。新生児期にしか見られない、あやうい可愛さがあります。
足はというと、もちろん小さい。片方の掌にすっぽり収まってしまいます。爪は、薄くて小さい。でも、形はお手本のような爪の形をしています。
そして足の裏。下の画像は、2号くんが生後20日くらいのものですが、窪みがあることがしっかり見て取れます。2号くんばかりではありません。そうちゃん、それに娘や息子が赤ちゃんの時にも、窪みが確認できました。
なんだ、そんな小さい時から土踏まずはあるんだ!
そんなふうに安心するのは、早計です。
窪みは、骨がアーチ状に配列されていることを表しているのみ。土踏まずの役割を果たしているのとは、別のことです。


土踏まずの画像

●土踏まずは、足に仕込まれた内蔵バネ
では、土踏まずはどんな構造になっていて、どんな役割をしているのか、復習しましょう。
土踏まず、つまり足の裏の窪みは、下の図に示すように足の内側と外側、それに指の付け根辺りを横に走る三つの弓形、つまりアーチ構造によって成り立っています。
言い換えると、足は三つのアーチによってドームのような構造になっています。このドームを裏側から見上げると窪みに見える。これが、土踏まずです。
では、どんな役割を果たしているのでしょう。
土踏まず、つまりドームは、足に内蔵されたバネと言えます。
バネは、力が加わると、潰れて、重みを受け止め、また加わった衝撃を吸収します。
つまり、立ったり歩いたりすると、内蔵バネが沈んで体重を受け止め姿勢を安定させ、かつ着地した時の衝撃を吸収するのです。
そして足が地面を離れる、つまり掛かっていた重さ=体重が取り除かれると、内蔵バネはピョンと元に戻り、その“ピョン”の力が次の一歩を踏み出す推進力となり、スムーズな歩行を可能にするのです。
かのレオナルド・ダ・ヴィンチは、「足は人間工学上の最高傑作であり、そしてまた最高の芸術作品である」という言葉を遺しているそうです。
土踏まずがあるのは、人間だけであり、土踏まずによって直立二足歩行が可能になっているのです。ダ・ヴィンチは、その仕組みを「人間工学上の最高傑作」と言ったのです。
でも、2号くんの窪みでは、それは叶いません。どうなると、最高傑作の土踏まずとして機能するのか。それは、次回に譲ります。


足の画像

 

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。