大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㉝ 歩く力は、DNAに埋め込まれている?!

ねぇ、このTwitter、見て!
娘がパソコンを片手に居間にやって来た。
画面には、赤ちゃん。次々に現れる赤ちゃんが、お相撲さんの股割りよろしく脚をいっぱいに開いたり、逆に縮こめたりして、足を地面に着けまいとしている。
かわいいでしょ!
半べそをかいて執拗に拒む姿が、なんとも微笑ましい。笑みが自然に浮かぶ。
でも、これって、なぜ。足に関係しているんじゃないの?
確かに!いいサジェスチョンだ。

●原始反射の一種…、調べました!
動画に登場するのは、ほとんどが外国の赤ちゃん。そして一生懸命に足を着けまいとしている地面は、ほとんどが芝生です。足の裏が芝に触れた瞬間にチクッとするはず。そのチクッを危険と察知して、そこに足を着けることを拒んでいるのだろうか…。
足の裏は、そんなにも敏感!
そうだとすれば、赤ちゃんのこの感覚、いわば能力を活用すれば、足底感覚を育てることができ、それが歩くことにプラスに働くのではないだろうか…。
これは、どなたかに教えを請うしかない。
閃いたのは、玉島麻理さん。玉島さんは、足育アドバイザーⓇを育てるNPO法人日本足育プロジェクト協会を立ち上げ、現在も理事長を務め、また個人でも子どもの足育を教えるサロンを営んでいらっしゃる。
質問メッセージを送ると、すぐに返事をくださった。
「原始反射の一種だと思います」。
原始反射…、聞いたことはありましたが、無意識のうちの反射運動だろう。そんな勝手に納得していました。
調べてみねば。インターネットのお世話になるしかありません。
ウィキペディアには、次のようにありました。
「幼児が特有の刺激に対して示す、中枢神経系によって引き起こされる反射行動のことである。この反射は、子供が成長して大人になり、前頭葉が発達する過程で失われていくものである」。
うむ、うむ、やっぱり無意識の反射だ。
勝手な納得を超えていたのは、原始反射は、たくさんあるということ。ウィキペディアには、11個も紹介されていました。そして足に関係するものが、二つもありました。
その一つが、足底反射。
玉島さんのお返事は、これを想定したものに違いありません。そしてお返事は、次のように続けられていました。

●甲をなでなで、足指がパーッ、足感覚が育つ!
「私のサロンでは、ゼロ歳からの足育をご提案していますが、その講座では、足底把握反射を利用して足裏を刺激することをお伝えしています。足の裏の指先の根元をチョンチョンとするとぎゅっと足を閉じます。足の甲をなでると指先がパーッと開きます。つまり原始反射を利用して、足のグーパー運動を行うのです。また屈曲が優位なのでぎゅっとしている赤ちゃんが多いのですが、指を開かせるために、指そらしをすることをお勧めしています。指を反らすことで、足指を使えるように脳に刺激を与えることを考えてのことです。
そしてこうして普段から親御さんがお子さんの足に触れていると、本当に足感覚が育つことを、講座に来てくださっているお子さんたちから学ばせてもらいました。
歩き出してまだ数ヵ月の2歳前に、靴が小さくなったと訴えるお子さん、同じデザインのお下がりの靴を「自分のじゃないからイヤ」というお子さん等々。足育をしていない子たちとの足感覚の差に驚くことばかりです」。
足の原始反射の活用は、足を育て、延いては正しく歩くことに関係するようです。
そして、足に関係する原始反射は二つあると書きましたが、もう一つは「歩行反射」であることも紹介しておきます。
赤ちゃんを両側の脇の下で支え、足の裏が軽く地面(床)に触れるようにすると、足を交互に動かしてまるで歩いているような動作をする。
歩くことは、遺伝子に埋め込まれているのですね。でも、それが消えてしまうということは、歩く能力を再び引き出し、育てるのは、赤ちゃんの側にいるあなた、お母さん、お父さんですよと言われているようではありませんか。

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。