大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㊱ サステイナビリティと子ども靴

サステイナビリティ(Sustainability)、日本語では「持続可能性」。この言葉を聞いたことがないという人は、いないのではないでしょうか。
そして今年、2020年は、もっと聞くことになりそうです。
リネアペレという見本市があります。靴の他、革を主要素材とした製品に用いる素材の見本市。年に2回、ミラノで開かれています。
昨年10月、そのリネアペレに行った時のこと、日本から来場した某社長が、次のようにおっしゃいました。
「トレンドコーナーは真っ赤なのに、会場はグリーン一色だね」。
リネアペレにはシーズン・トレンドを提案するコーナーがあるのですが、次シーズンのトレンドカラーが赤ということで、コーナーの演出のキーカラーは、赤。それに反して会場に陣取る主要出展者はグリーンを基調にした演出。サステイナビリティ一色だったのです。
また偶然に会ったデザイナーは「消費者は、サステイナビリティを求めているんでしょうか…」と。
でも、求めている、つまりニーズやウオンツがあるから、言ってみれば“売れるから取り組む”といった問題ではないようです。
暖かい冬、暑すぎる夏、巨大台風の発生・襲来、水害、多発する山火事等々、スウェーデン人の少女が声を上げたように、早く積極的な手を打たないと、地球という環境を未来に渡せない事態になりかねない…。
そして、世界を代表するブランドが、こうした意識を持つようになっています。それは近年、高まりつつあるCSR(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)の観点からということもあると思います。
私が見た、サステイナビリティ一色のリネアペレも、企業がサステイナビリティを意識し始めたことの表れですが、もっと身近で見て取ることができます。
例えばプラダは、再生ナイロンのバッグを発売しました。
もっと身近なのが、ユニクロのファーストリテイリングです。昨年、サステイナブルであることが、すべてに優先することを宣言し、彼らが掲げる「LifeWear」というコンセプトが、それを実現するものだとしたのです。

●安価 or 高価、どっちが真の節約か
サステイナビリティがテーマなんて唐突!と思われるでしょうが、こんな状況があるので、子ども靴にとってのサステイナビリティを考えてみたくなったのです。
考えました。そして浮かんで来たのは、リコスタ社のラルフ・リーカー社長の問いかけでした。
靴代を節約しようと、安価で品質の低い靴を履かせ、足の健康を害すのと、高価でも品質の高い靴を履かせ、健康な足で一生を過ごすのと、どちらが本当の節約でしょうか。
リーカー社長が正解とするのはもちろん、後者。私の答えも、同じです。
安い靴は、たくさんあります。500円の靴だってあります。それらのすべてとは言えませんが、相対的に言えば、高価なものより品質は劣ります。なぜなら安い価格にするには、コストを抑える必要があるので、素材の質を落としたり、ここに一手間掛ければ丈夫にできるという工程を省かざを得ないからです。
すると、これも相対的にですが、早く壊れます。壊れると捨てざるを得ません。捨てると、ゴミになります。靴はほとんどの自治体が可燃ゴミと分類しているので、焼却処理されます。すると、温室効果ガスが排出されます。
サステイナビリティの観点からも壊れやすい=ゴミになりやすい靴は、購入しないのがベターとなります。
そして、何より重要なのが、健康な子どもを育てること。次代を担う子ども達が健康であってこそ、持続可能な社会が実現できるのですから。
それには、靴が健康に及ぼす功罪を正しく認識し、足の健康に育てることができる良い靴を履かせなければなりません。

リネアペレ(2019年10月@ミラノ)でサステイナビリティを打ち出す著名テキスタイルメーカー

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。