大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㉗ 足の指、動かせてますか?

長いこと、一つの分野で仕事をしていると、繋がりが長年になる一方、また長い間、途絶えていた繋がりが復活することもあります。
半年ほど前、“覚えていらっしゃいますか?”という件名のメールを受信しました。開いてみると、10年以上前に一度だけお話しした方。共通の知人から偶然に私の名前を聞き、懐かしさで連絡をくださったのでした。“機会があれば是非、また”とお返事しましたが、機会は、すぐにやって来ました。
別の知り合いから相談事が持ち込まれ、事を進めるには誰に繋ぐのがいいかと思案。ハッと閃いたのが、その方!それで連絡をしたところ、ちょうど上京の予定があるとのことで、すぐにお約束。半月ほど前のことです。

●1万5000人以上の幼児の足を測定
このコラムに書くのですから、子どもの足と靴に取り組んでいらっしゃる方です。
地方自治体からの委託、幼稚園・保育園、また市民団体などからの依頼で、子ども達の足の測定し、その結果に基づいて、健康な足、延いては全身を健康に導くための育児や生活改善を提案していらっしゃいます。
測定はもちろん、足長や足囲だけではありません。足底(足の裏)の状態、足全体と細部の観察から、土踏まずの形成度、足の指に内反小趾や浮き指などが見られないか、踵の外反はないかなどを判定します。
その結果を見せていただきましたが、園によって足の状態がかなり違いました。これは、園でどのように過ごしているかによるようです。分かりやすく言うと、上履きを履かせているか、裸足保育なのか、制靴があるか、また歩いて通園しているか、バスなのかといったことです。既に1万5000人以上の幼児の足を測定なさっていて、その結果や前記の違いによる足の状態の違いを、著書(画像参照)にまとめられています。興味のある方は、ご覧になってください。
私も幼稚園での足測定をお手伝いしたことがあり、子どもたちが履いている靴の実態を少しは知っているので、こんなことをお話ししました。
「何より驚いたのは、砂がいっぱい入ったまま靴を履いている子が少なからずいたこと。お母さんは、お子さんの靴をもっと見て欲しい。そうすれば、靴の状態は改善されるだろうし、良い靴とはどんな靴かにも関心が向く。まず踵がしっかりしていて」

●踵より指の動きを妨げないこと
ここまで話した時、「いや」。
遮られて、ピンと来て、返した。
「足趾の動きですか?」
「そうです!踵がしっかりしていても、指の動きを妨げるような履き方をしているお子さんには、指の問題が多く見られます。踵が柔らかくても、踵に合わせて靴をしっかり留めて履いているお子さんは、指の問題が少ない。指をしっかり使って歩けているからです」。
歩く時、指で地面を捕らえ、次に指で蹴り出し推進力をつけ次の一歩を踏み出します。指が十分に使えないと、荷重がアンバランスになり、どこかに過度に力が加わり、それが指のトラブルの原因になります。
また、転びそうになった時、指を開いて踏ん張り、体の安定を図ります。指はスタビライザーのような役割をしているのですが、指が締めつけられていて開けないと、踏ん張れず平衡が取れなくなり、転びやすくなります。
さらに指の動きは、筋肉を刺激します。刺激によって筋肉が鍛えられます。鍛えられると、土踏まずを支えられるようになり、土踏まずの形成を促します。また筋肉の収縮によって、血液が心臓に押し戻されます。つまり、血液の循環が良くなります。
指を動かすと、良いことずくめ。
指が動かせる靴を履いて、どんどん歩きましょう!

柴田英俊さん著
『子どもの成長は足で決まる!』
(運動と医学の出版社刊)

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴辞典」(シューフィル刊)がある。