大谷知子

子供の足と靴のこと

連載㊵ こんな事態だから、親子で元気になれる足の絵本

緊急事態宣言が5月末まで延長され、巣ごもり生活が続いています。皆さん、いかがお過ごしですか?
私は、安倍首相の記者会見や国会中継を見るたびに、緊急事態を宣言した、その人のどんよりした目、野党の質問も含めお定まりの発言にイライラ。最後は、自分のことは自分で守る、家族を守ると思い決め、自分を落ち着かせています。
人の来ない売場を目の当たりにしている皆さん他、私のようなことでは済まない方々がたくさんいらっしゃると思います。お定まりの励まししか言えない。無力です。
子供たちは、どうしているでしょうか。
子供は本来、外で遊ぶのが仕事です。
「お外に出たい!」「ダメなの。我慢して。おうちの中で遊ぼ」。
こんなやり取りが1ヵ月以上、繰り返されたら、お母さんのストレスはうなぎ登り!
子供はニコニコ、お母さんはホッコリ。そんな絵本を紹介しよう!もちろん、靴、足が題材&登場が条件です。
『シンデレラ』など定番を含め、いくつか紹介するつもりで本棚を漁っていると、忘れていた本を見つけました。
表紙を開いて、1ページ、2ページ……。
心が、晴れました。
よし、この一冊を紹介しよう!

●谷川俊太郎作 写真絵本です
タイトルは『あし あし はだし』。
作者は、谷川俊太郎。
哲学者、谷川徹三の息子にして、日本を代表する詩人。堅い詩集ばかりではありません。児童書や童話の翻訳、童謡の歌詞、そしてたくさんのオリジナル絵本や童話もつくっています。
本棚にあったのは、その一つ。『年少版・こどものとも』1994年7月号です。
『年少版・こどものとも』は、福音館書店発行の月刊絵本。今も発行されていますが、息子が保育園の時に定期購読しており、「あし」がテーマなので取っておいたのでした。
『あし あし はだし』は、正確には写真絵本です。谷川俊太郎の詩に写真家・中村ノブオが捉えた子どもの動作が組み合わされています。
冒頭の数ページを引用します。

あし あし わたれ
いっぽんばし わたれ
ゆらゆら ゆれる
かぜ かぜ ふくな

あし あし たった
ちきゅうに たった
さあこい どんとこい
かかって こい

あし あし せのび
ぐんぐん せのび
とどけば とれる
おほしさま とれる

●笑みが浮かび、前を向けます
ページを繰るごとに、こんな詩が子どもの写真とともに現れます。
平易な言葉
言葉遊びのような語呂の良さ
歌うようなテンポ
意味がないようでいて確かに響く
微笑みが浮かぶ
自然に顔が上がり前を向いていました
折り込みの付録に谷川俊太郎自身が「はだしの喜び」と題した文章を寄せています。
その最後を紹介します。
「(前略)足はからだに生命のリズムを生み出します。子どもたちにそのすばらしさと大切さを気づいてほしいと思います。」
福音館書店のホームページには、「年少版・こどものとも」バックナンバー全号が紹介されています。購入できるのですが、『あし あし はだし』は「品切れ」の表示。それはそうです。26年も前の発行なのですから。
手に入らないものを紹介してしまったお詫びに、手に入る絵本を紹介しておきます。
『あしとくんとあしみちゃんーーぼく と わたしの あし と くつ』です。
作者は、日本足育プロジェクト協会認定の足育アドバイザー、小川奈緒子さん。内容は、足育絵本というべきものです。発行元の前記協会(e-mail:info@ashiiku-pj.com)に問い合わせれば、入手できます。

福音館書店刊『年少版・こどものとも』1994年7月号『あし あし はだし』表紙(左)と中表紙

中ページ

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。