大谷知子

子供の足と靴のこと

連載55 そうちゃんのくつ 2

そうちゃんが歩き始めました。1歳4ヵ月でした。
実は、お誕生日が過ぎてから少し心配でした。自分の子どもは二人ともお誕生日には、歩いていたからです。成長が遅いのだろうか…、どこか問題があるのだろうか…。身体の歩く準備ができれば、歩き始める。分かってはいても、肉親となると心配になってしまう…。
やっぱり取り越し苦労でした。
さあ、13センチを作ってあげなきゃ。
早速、件の職人に発注メッセージを送りました。
1週間後、13センチが届きました。
その翌日、そうちゃんがわが家に来たので、履かせてみました。
あれっ、大きい。
甲周りが大きいようで、そうちゃんの甲に合わせると、羽根に相当する部分の重なりが大きく、面ファスナー付きのベルトが余り過ぎ状態になる。爪先も、少し余り過ぎの感。
それに立ったところを後ろから見ると、特に左足が、内側に倒れ気味になっているのでしょう。ソールとアッパーの接合付近のアッパーにシワが出ている。まだ、外をたくさん歩かないファーストシューズ仕様なのでカウンターは入っていない。カウンターが必要なのではないか…。
以上のメッセージを添えて、修正依頼。届いたばかりの靴を返送しました。
職人から届いた答えは、「13センチは大きすぎるようだ。足長を3ミリ小さくし、バージョンアップします」。
さて、どんなふうにバージョンアップするのか。楽しみと多少の不安を持ちつつ、待つこと、1週間余り。届いた!
踵を白い革がカバーする形に変わっていました。
踵を外側から厚めの革で補強することによって、カウンターの機能を付加したんだ。なるほど、なるほど。見た目は、黃色と白のコンビネーションとなり、デザイン面でもバージョンアップされた気がする。やるじゃないか!
そうちゃんは今、バージョンアップ版を履いて歩いています。

バージョンアップ前

●そうちゃんは、ペタペタと歩いています
歩き始めた、そうちゃんの歩きを見て、気づいたことがあります。
足の出方は、両足ともに爪先が外側を向いている。そうちゃんの側から見ると、逆ハの字のように足を運んでいます。そして着地は、足の裏全体。ペタ、ペタ、ペタという音が聞こえてくるようです。
あおり運動ができていないのですね。
自分の子どもは、余裕がなかったのか、そんな観察はできませんでした。その後、知識として認識したことを、そうちゃんの歩きで確認し、なるほど、やっぱりです。
あおり運動が、どれほど大切であるか。そしてそれを可能にしているアーチ構造の大切さを思いました。
アーチは、一般的に4歳くらいまでに形成されると言われています。子ども達のアーチ形成が弱いと言われている今、そうちゃんの足がしっかり育つようにサポートしなければと思います。
今は、1歳6ヵ月に入りました。つい先日、そうちゃんに会いましたが、少しだけ歩容が変わり、ペタペタ歩きからほんの少し脱しつつあるように見えました。
そう見えるのは、欲目かもしれませんが、不安定な歩きを助け、支えてくれるのが、靴。そして、足を健全に育てる最良の方法は、歩くことです。
そうちゃん、靴を履いて、いっぱい歩いてね。

バージョンアップ後

大谷知子(おおや・ともこ)
靴ジャーナリスト。1953年、埼玉県生まれ。靴業界誌「靴業界(現フットウエア・プレス)」を皮切りに、靴のカルチャーマガジン「シューフィル」(1997年創刊)の主筆を務めるなど、靴の取材・執筆歴は約40年。ビジネス、ファッション、カルチャー、そして健康と靴をオールラウンドにカバーし、1996年に出版した「子供靴はこんなに怖い」(宙出版刊)では、靴が子どもの足の健全な成長に大きな役割を果たすことを、初めて体系立てた形で世に知らしめた。現在は、フリーランスで海外を含め取材活動を行い、靴やアパレルの専門紙誌に執筆。講演活動も行っている。著書は、他に「百靴事典」(シューフィル刊)がある。